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「NiziU・ミイヒ 休養」、芸能や芸術は「痩せ姫」にとって毒かクスリか(作家・宝泉薫)

■激痩せから復調して活躍する「瘦せ姫」女優たち

 かと思えば、痩せ姫としての期間が比較的短く終わる人もいる。

 2015年にNHKの朝ドラ「マッサン」に出演中、激痩せをきたし、活動を休止した優希美青は数ヶ月後に復帰。体型も激痩せ以前のものに戻り、現在放送中のNHKのBS時代劇「赤ひげ3」ではヒロイン役を務めている。

浜辺美波

 

 また、昨年、激痩せが騒がれた浜辺美波は特に休養することもなく、体型的にも復調して、ドラマに映画にますます活躍中だ。

 ふたりとも、激痩せ時も魅力的だったが、女優業をこなすための体力や世間ウケを考えれば、今くらいの体型が芸能活動に向いているのだろう。

 このふたりに比べ、かなり深刻な激痩せに思えた宮沢りえも活動休止期間は数ヶ月にとどまった。現在も細身だが、病的ではない。むしろ、この時期を境に元気でセクシーなアイドル女優からスレンダーな演技派女優へとうまくイメージチェンジできた印象もある。

宮沢りえ

 

 あるいは、アスリートにも激痩せによるブランクをプラスにできた人がいる。フィギュアスケートの鈴木明子は大学1年のとき、拒食で数ヶ月を棒に振ったが、これにより、芯の強さを身につけたように見える。その後、世界選手権で銀メダルを獲るほどの名選手へと飛躍した。

 芸能人や芸術家、アスリートに、こうしたケースが多いのは「確かさ」という問題が関係しているのだろう。これは前出のレネが「病気の何を必要としていた?」という問いかけに対して使った言葉だ。

「確かさ、です。他は何もかも不確かだった」

 つまり、痩せること、痩せていることだけが彼女には唯一の「確かさ」だったわけだ。この「確かさ」は、生きている意味とか実感に置き換えることもでき、だからこそ痩せ姫は「太るくらいなら死んだほうがいい」と口にしたりもする。それでも芸能人や芸術家、アスリートの場合は他の「確かさ」を持っていたり、見つけやすかったりするのだ。

 たとえば、前出の鈴木は入院を勧められたが、それでは復帰への期間が延び、選手としての大事な時期を無駄にしてしまうと考えた。彼女には、スケートこそが「痩せ」以上の生きる意味や実感に思えたのだ。それゆえ、実家での療養を選択。これが早い復帰につながったという。

 では、ミイヒについてはどうか。あくまで想像だが、オーディション中の彼女は、アイドルを目指し、歌やダンス、自分磨きに励むなかで「確かさ」を感じられていただろう。ところが、さぁこれからというときに、休養を余儀なくされ、その確かさがあいまいになってしまったのではないか。あるいは今「痩せ」が何物にも代えがたい「確かさ」になっているとしたら、早期の復帰は難しくなる。

 せめて年内いっぱい活動できていれば「紅白」のステージにも立てたのに、と思う一方で、意外と早く体調不良が改善され「紅白」で復帰という展開だって考えられないわけではない。なんにせよ、どう生きるかは彼女自身の問題だ。

 それにしても、痩せ姫の葛藤は美しい。それはこのあいまいな世の中で、彼女たちがひたむきに「確かさ」を求め、常にきわどく絶妙なバランスで生きているからだろう。

(宝泉薫 作家・芸能評論家)

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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  • 2016.09.10